2018年03月17日

桜花盗人2


○市中

 朝となり、身支度を整え、氏直は仕事場へと向かう途中だ。
 その横には、大地を歩く千歳がいる。
 流石に大衆の面前で宙に浮くつもりはないらしい。

氏直:千歳殿、気になったのだが。其方はあの場より離れてもよかったのか?
千歳:今更な質問だとおものだけれど?
氏直:ぬう、すまぬ

 少し苦笑して、けれど大丈夫だと言う千歳。

千歳:あそこに留まっていた理由はあるけれど、私は自縛霊ではないもの。好きなときに、好きな場所へと赴くわ
氏直:して、千歳殿。桜花盗人は何処(いずこ)に
千歳:知らないわ。私が見たのは影だけ。あれは3日ほど前のことよ

○回想

 3日前のこと。
 いつものように千歳が簀子縁の手摺に座っていると、どこからが唸る声が響いてきた。
 それは幼子のようにも、女性のようにも聞こえる。
 ただ一つ言えるのは、その唸りが負の感情を含有しているということ。

影:(唸る)

 声の出所らしき影を見つけると千歳はいぶかしげに問いかける。

千歳:貴方、そこでなにをしているの? ここは私の場所なの、出て行って頂戴
影:……クラ、喰ウ、サ……クラ、桜ァアア!

 聞き取りにくく、また耳障りな音が千歳の耳に入ると同時に、風が吹く。
 その風がザアザアと啼き、蕾を落とし、そしてどういうわけか、木を枯らしていく。

千歳:え? ちょっと! ひゃ?

 千歳は風に髪を止め、目をつぶった。
 そうして再び開いたときには、陰の姿はなく、そろそろ咲く準備をしていた桜は無残にも枯れ果てていた。
 乱れた髪を手ぐしで戻すと、少しの怒りが募る千歳。
 この場所は長く己の場所だったのだ、それをいきなりの来訪者に荒らされれば怒りもしよう。

千歳:もう、なんて乱暴なの。ちょっと貴方――あら? いない。あ、桜が

 花だけでなく木の水分まで根こそぎ取られた枯れ木が、そこに佇んでいた。

○市中

 大きな男に小さな女童がついていく様子は周囲から視線を集めているが、二人は気にした様子がない。
 ずんずんと歩いていく氏直。
 千歳は歩き慣れない為か疲れている様子だが、それを口に出す様子はない。
 また氏直が気づく気配もない。

氏直:影、か。やはり、人の身ではないのだな
千歳:影は建物の暗部より現れたの。他の陰を伝って移動しているのだと思うわ

 氏直は立ち止まり、枯れ木となってしまっている桜を見上げる。

氏直:なにゆえ桜を散らすのか。皆がこれほどまでに待ちわびておると云うに
千歳:嫌いだからじゃない
氏直:なぜ嫌悪する。鼻はちとむず痒くなるが、開花の頃となれば景観実に素晴らしく、たいそう見事であるぞ
千歳:大衆が好むからと、影もそうとは限らないわ。とにかく、桜に嫌悪を持って死んだ輩を調べましょう
氏直:ふうむ、そのような輩がおるとは思えぬが
千歳:貴方の見聞だけで判断しないでほしいわ。さ、知識人に会わせて頂戴
氏直:都で起きたことをよく知る御仁しか、当てはござらぬが
千歳:その人でいいから。貴方の頭を一周回したところで、他に情報なんて出てこないのだから
氏直:相判(あいわか)った。暫(しば)し待たれよ

○相模の屋敷

 SE 木の床を歩く

氏直:相模(さがみ)殿、相模殿はおられるか
相模:なに者じゃ? おお、伊都ではないか、よぉきた。ほれ、近こうよ寄れ
氏直:っは! 相模殿におかれましては、ご健康のことと存じ奉り候
相模:面倒な男よのぉ、童(わらべ)のように、相模と呼べばよいと云うに
氏直:平にご容赦いただきたく
相模:よいよい。して、なにようじゃ?
氏直:っは! 某、只今、都を騒がせたる桜花盗人を探しておりまする。さる情報より、輩は桜になにやら私怨ありと判断いたしましたゆえ、故人にそのような方をご存知ではないかと、相模殿の下へ参上仕った次第でございます
相模:ふうむ、桜に怨毒(えんどく)有りとな。ははは、それはまこと多きことだ
千歳:ほぉら、やっぱり多いんじゃない
氏直:桜に恨みを持つ輩が多いとは……、納得ゆかぬ
相模:伊都、そちらは紹介してはくれぬのか?
氏直:あや、これは失礼を。此方は千歳殿でござる
相模:……それだけか?
氏直:む? ほかになにを申せば
相模:ははは、よいよい。其方は変わらぬな。大変に阿呆だ
千歳:まってくもって同意よ
氏直:なにゆえであるか!?
千歳:阿呆は茶でも飲んでいて。私が相模とお話するわ
氏直:千歳殿!
相模:伊都。喧しい
氏直:っぐ、黙りまする
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2018年03月10日

リスキーナイトのなりそこない台本


錆びた住宅街に、響く銃声
どこかで爆破音が響き、それがソフィアの髪を揺らした

リズ:イディアのやつら。めちゃくちゃ暴れてますね
ソフィア:ランスロット、現状は?
ランスロット:イディアの連中がこの区画一体を制圧してますねー。公安のやつらがちょっかい出したらしいですけど全滅。お手上げですねー
ソフィア:そう言うセリフは、全力を尽くしたあとで聞きたいものだ
ランスロット:僕はいつでも全力ですけど?
ソフィア:そうか?
デイジー:はん、どうでもいい、さっさと始めようぜ。こちとら暴れたくてウズウズしてんだからさ
リズ:デイジーはさー、暴れれたらそれでいいんでしょ?
デイジー:ちがいねぇな
リズ:暴れるのはいいけど、任務の邪魔はしないでね
デイジー:あんだと?
リズ:だってこの間だって、デイジーが暴れたせいでイディアの連中死んじゃったし
デイジー:クソみてぇな奴らをぶっ殺して何が悪い
ランスロット:捕獲指示が出てる時には殺さずに持って帰ってこようよ、僕だって我慢してるんだからさ
デイジー:死体愛好者(ネクロフィリア)は引っ込んでな
ランスロット:……なに、僕とやりあうの?
デイジー:おーおー、やれるもんならやって見やがれってんだ
ソフィア:はいはい、そこまでだお前たち。今日は新人も来るんだから、みんな気を引き締めて

車が到着する

レヴィ:遅くなって申し訳ありません、本日づけでエトアリストに配属となりました、レヴィ・オールドマンです
ソフィア:ご苦労。私は君の上司のソフィアだ。悪いが悠長に紹介し合っていられなくてな

レーダーが反応

ランスロット:おっと、敵さんに見つかりましたね。衝突は30秒後かと
ソフィア:レヴィといったな、配属早々で悪いがイディア殲滅に力を貸して欲しい。奴らはエトアールの、我ら人類の敵だ
リズ:ほうら新人

リズがレヴィにシュヴァルデ(エトアリストが持つことを許された銃)を放り投げる

レヴィ:うっわ!?
リズ:それはシュヴァルデ。まぁ、銃みたいなものだね。使い方は−−

銃撃の音
誰かが打たれる

誰か:うわぁあ!

ソフィア:全員、伏せろ!

近場で爆発音(手榴弾が投擲された)

ランスロット:ああ、もったいない。バラバラになったら意味ないのに
デイジー:はじまったか! 先行くぜ
ランスロット:うん、僕も行こうかな。レヴィくん、次は死体になった君に会いたいね

デイジー・ランスロットは駆け出していく

レヴィ:え、え!?
ソフィア:こら待てお前たち。くそ、リズ、レヴィを頼むぞ
リズ:えー
ソフィア:リズ
リズ:……はーい。いくよ新人
レヴィ:はい!

リズは先頭に立ち、周囲を見渡している

レヴィ:あの
リズ:なに
レヴィ:俺たちエトアリストって、イディアを殲滅するための組織なんですよね
リズ:そうだよ。イディアの連中は絶対的正義判断システム、エトアールを壊そうとしてる。だからそれを阻止するために政府が作った組織がエトアリスト
レヴィ:エトアールは俺たち人間にとって未来の道しるべみたいなものじゃないですか。イディアは何故それを壊そうとするんでしょうか
リズ:……奴らはエトアールの判断を正義だと思ってないんだよ。己で出した答えこそが正義だと信じている。そしてエトアールを普及させようとしている世界を憎んでいる
レヴィ:憎んでいる?
リズ:おっと、おしゃべりはここまで。あっちにいるよ

誰かが徘徊している

誰か:エトアール、エトアールさえいなければ私の娘は死なずに済んだ。どうして? 何がいけないの? 生きていただけなのに、何故!

リズ無線機を取り出す

リズ:こちらリズ、イディアらしき人物を発見
ソフィア:了解した。捕獲できそうか?
リズ:やってみます

無線機をしまう

リズ:あんたはここにいて
レヴィ:俺も行きます!
リズ:……足でまといなんだけど
レヴィ:前の職場で銃の成績は上位でした。邪魔はしませんから!
リズ:はぁ、まぁいいか。死んでも知らないからね
レヴィ:はい!

二人はイディアへとは知っていく

レヴィ:そこの人、止まりなさい。あなたはイディアですね。こちらはエトアリストです。無駄な抵抗はせず、おとなしく投降しなさい
誰か:エトアリスト、あの子を奪ったエトアールの犬? あの子を奪った。あの子を、あの子を返せ!

声に連動し、近くにあったコンクリートがへこむ

レヴィ:声に連動してモノが、壊れた?
リズ:イディアの能力だよ。奴らは想像力を物理的力に変換できる
誰か:死ねぇ!!
リズ:避けて!

レヴィは地面を蹴り逃げると、そばにあるった地面がへこんだ
物陰に隠れるレヴィ

レヴィ:くそ、冗談だろ。あんな力。人間じゃないみたい−−

誰かはぬっと物陰から現れる

誰か:人間じゃないならなんだというの?
レヴィ:うわぁ!?

レヴィは誰かに向かって発砲
銃が当たった瞬間、誰かは倒れた

レヴィ:……やった?

レヴィは誰かに近づこうとする

リズ:バカ、まだ−−
誰か:あぁああああ!!

誰かは起き上がり、レヴィの首を絞めてくる

誰か:どうして、どうして? 死ななければいけないの!? どうして殺したの! 返して、娘を返して!
レヴィ:が、あ……っぁ!
誰か:エトアール、エトアール!!
レヴィ:っく……!
誰か:何故! 何故なの、なぜ死ななければいけないの!
リズ:悪だったからだよ

リズが誰かの脳に向けて発砲
誰かは絶命

レヴィ:げほ、っけほ!

リズは無線機を取り出す

リズ:……目標、捕獲失敗しました
ソフィア:わかった。こちらに戻ってくれ
リズ:了解。いくよ、新人
レヴィ:あ、はい。……あの、助けてくれてありがとうございます
リズ:……あんたさ
レヴィ:はい?
リズ:いや、なんでもない。ほら、急ぐよ

posted by 日下稔 at 22:59 | Comment(0) | 台本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年02月10日

お友達の家

書いて、途中でとまってしまったもの。
書ききるか分からないので、とりあえず保存用においておこうと思いました!


しーん1

○玄関ホール

 気絶している白川が目を覚ます

白川:う、ううん? え? なに、ここ。あ、綾香さん
森下:うー、ゆらさないでー。吐くー。うぇぇえ
白川:起きてください。ここ、どこですか? なんで僕ら、床で寝てるんですか?

 森下が起きる

森下:うー、もー!! こーちゃん煩い!! 二日酔いで頭痛いんだから
白川:でもここ、絶対に知らない人の家ですよ?
森下:知らない人のぉ? ……なにここ、どこ。てかなんで床で寝てんの、布団は?
白川:玄関ホールに布団を敷いて寝るのは普通じゃないような
森下:大きな屋敷だね。んー? こーちゃん家、改築した?
白川:してません!
森下:じゃここどこ
白川:だから、知らない人の家ですってばー!

 誰かがホール左階段を下りてくる

筒井:よぉ、起きたか森下に晃司、お前らぐっすり寝てたなぁ
森下:筒井くん?

 右階段から葛西が下りてくる

葛西:筒井さん、そちらには誰かいましたか?
筒井:いんや、誰もいねぇな。そっちはどうだった、葛西
葛西:残念ながら誰も。ああ、起きたんですね、白川さん、森下さん
白川:葛西さん。えっと、どういう状況なんでしょうか。僕ら、昨日同窓会で
森下:酒をしこたま呑んで、吐いて、呑んで、吐いて、吐いて、気絶して
白川:吐いたのは綾香さんだけです
森下:こーちゃん煩い
葛西:わたしも同窓会にいたのは覚えているんですが
筒井:この屋敷に来た記憶がとーんとねぇのな。一応聞くが、お前らの家じゃ
白川:ないです
森下:ないよ
筒井:つーことはだ
森下:つーことは!!
筒井:分からん!!
白川:……えっと、家の人は
葛西:探したんですが、見つかりませんでした。と言っても、確認できた範囲は狭いですが
筒井:でかい屋敷だからな。天井には豪華なシャンデリア、アンティーク調な柱時計に、壁の美しい絵画たち。金持ちの匂いがぷんぷだ
森下:ここにいるの、あたしたちだけ?
葛西:あと二人、大喜多さんと原渕さんがいます。まだ屋敷を探索しているんでしょうか
白川:……誰の家でもないんですよね。家人もいない
筒井:たぶんな
森下:じゃあ帰ろうよ。お邪魔しましたって書き置きしてさ
葛西:それがですね、森下さんたちの後ろにある扉なんですが―−開かないんです
森下:えー? じゃあ窓から
筒井:窓には全部、鉄格子がついてるんだなぁ、これが
白川:それじゃまるで、閉じ込められたみたいじゃないですか!
筒井:晃司、みたい、じゃなくて閉じ込められたんだ
白川:なんのためにですか!?
筒井:分からん!
白川:け、携帯で外と連絡を
筒井:ざんねーん、圏外だぴょん
白川:嘘ですよね! あ、僕の携帯は――圏外
森下:あたしもだ

 なにかが階段から降りてくる

葛西:誰か来ました

 なにかが4人の前で止まりお辞儀する

ソフィー:うさ、うさ、うさ。ぺこり! ようこそ当館へ。ボクは当館のマスコット、ソフィーです
筒井:ウサギのぬいぐるみだ
白川:ううう、動いてますよ!!
森下:こーちゃん煩い
ソフィー:あなた達はご主人さまに招かれました。なのでどうぞ、お部屋にご案内します
葛西:ご主人さまとは誰ですか。私たちはここを出て行きたいのですが
ソフィー:うさ? ご主人さまは皆さまが知っている人ですよ。ずーっと昔から知っている人です
葛西:名前は教えてもらえないんですか
ソフィー:お友達なら、覚えていて当然でしょう?
筒井:うーん、それがなぁ
ソフィー:名前も思い出せないのなら、それはお友達じゃないということです。そんな人はこのお屋敷に要りません
筒井:要らない場合はどうなるんだ?
ソフィー:うさ? 必要ない人間は処分です。ご主人さまは繊細ですから、お友達じゃない人は処分です
葛西:処分とは、どのようにするのか聞いてもいいでしょうか
ソフィー:そんなの決まっていますよ! 千切って、小さくして、生ゴミと一緒に――ポイです
筒井:俺らのほかにも人がいるんだが
ソフィー:そちらのお友達にもボクらが挨拶をしに行っています。大丈夫ですよ、お部屋で会えます
白川:ど、どうしましょう。絶対に変ですよ、あのマスコット
森下:下手に刺激しないほうがいい?
葛西:私もそうすべきだと思います
筒井:だな。じゃあ案内してくれよ、ソフィー
ソフィー:はぁい! それではご主人さまのお友達、5名さま、ご案内ー!
葛西:……5人? 待ってください、私たちは全員で6人――
ソフィー:お1人、お友達じゃなかったそうなので――処分しました
posted by 日下稔 at 17:00 | Comment(0) | 台本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2017年02月09日

『異国の少年』 の派生作品です

『異国の少年』
飛べない人は、こちらより (http://cocommu.com/script/00066b15eab5852036a111ed36375b2d)

↑の作品(作:綾瀬桂吾さま)のキャラを使った台本を書かせてもらいました!
なにがあっても怒ってはいけません。

○駅前

 仕事帰り、疲れた女性が駅の改札を通ってくる

女性:あー、疲れた。仕事配分、絶対おかしい。嫌われてるのは分かるけどさ、お局さま、やりすぎにも程があるって。ほかの人は見て見ぬフリだし。あーも、どうしてぺーぺーの私が――

 少年を発見

女性:(見ほれて)……綺麗。え、外国の子?

 少年が気づく

少年:……?
女性:あ

 少年が近づいてくる

少年:なに、お姉さん。僕のことじぃ……っと見て。なんか、僕……変?
女性:あや、見慣れない姿だったからつい
少年:確かにこの国では、僕みたいな見た目の奴は珍しいかもしれないけど
女性:あー、はは。うん、ごめんね。ぶしつけだったね
少年:ぶしつけじゃないけど
女性:ないけど?
少年:あんまり見つめられると……その、恥ずかしいから……やめて…くれない…?
女性:(真顔で)可愛いし
少年:(むっとして)可愛くない
女性:いや、絶対的に可愛いよ。神さまの子だって紹介されたら頷くから
少年:(笑う)なにそれ。人はみな、神の子だよ
女性:残念。私の家、仏教だから
少年:キリストの聖誕祭を祝うのに?
女性:日本人はそういう生き物なの
少年:(笑う)もう、なにそれ
女性:綺麗なうえに可愛いなんて、はぁ。神さま、平等に人を作ってよ
少年:僕、カッコいいって言われたいんだけど
女性:(笑う)可愛いから、ダメ。誰か待ってるの? もういい時間だよ
少年:気にしなくていいよ。お姉さんは仕事帰り? お疲れさま
女性:ありがとう
少年:ぁ――。じゃね

 少年は歩き出す

女性:え、待って。ね、どこに行くの?
少年:お姉さん、暇なんだ
女性:帰ってコンビニ弁当とビール飲むしかないからね
少年:カレシさんは? いないの?
女性:いたら残業なんて投げ捨てて帰ってる。ね、本当にこの時間に1人だと補導されるよ
少年:僕、日本人じゃないし
女性:でも、危ない人に連れ去られる可能性だってあるよ。いきなり知らない人に襲いかかられたり
少年:お姉さんみたいな?
女性:私は! 危険じゃありません!! 

 少年は歩いていってしまう

女性:あ、ねぇって
少年:好奇心旺盛なのは可愛いけど、簡単についてきちゃダメだよ、お姉さん
女性:君がどこに行くのか教えてくれて、納得できれば帰るから
少年:納得できなければ?
女性:ついて行こうかな
少年:(ため息)――ま、いいけど。来るならおいでよ
女性:どこに行くのか教えてくれないの?
少年:ついてくるんでしょ。説明するより見たほうが早い
女性:不安なんだけど
少年:じゃあ帰る?
女性:帰りません
少年:変なお姉さん

○屋敷前

少年:ついたよ。こっち
女性:普通の家、よりは大きいけど、お屋敷? しかもここ、幽霊屋敷で有名な
少年:(少し遠くから)おねーさーん
女性:わ、置いてかないで!
少年:慌てなくても大丈夫だよ。もう置いていかないから
女性:……ねぇ、君さ。もしかして――幽霊?
少年:お姉さんに僕がそう見えるのなら、そうかもね
女性:えー

 玄関扉を開ける

女性:(小声で)お、じゃましまーす。あ、案外普通。ちょっと寒いけど。冷房?
少年:うん、保存状態が悪くなるから
女性:なんの保存? や、やっぱり幽霊!
少年:お姉さん幽霊好きなの? 残念だけど、幽霊は保存してないな
女性:好きじゃないから!
少年:そう? こっち
女性:待って

○廊下

女性:ワインセラーとかってこんな温度だよね。ワイン貯蔵してる?
少年:どうだろう。割れたものならあるかもだけど
女性:割れたワインって、ただの瓶、もしくは壊れた樽だよね
少年:うん、そっちじゃないと価値ないしね
女性:えー。ワインは中身が入ってこそだよ?
少年:そうかな
女性:そうです
少年:……ねぇお姉さん、本当についてくるんだね?
女性:ここまで来て引き返すってのはないかな
少年:そっか。じゃあ開けるね

○部屋

少年:はいどうぞ。ショーケースには触れちゃダメだよ
女性:暗くてなにも見えないんだけど
少年:電気つけるね

 電気がつく

女性:こ、これは!! ――石ころとか、なにかのトロフィー? あと焼けた服に、指輪とか、めがね?
少年:博士のコレクションだよ
女性:博士?
少年:この屋敷の持ち主で、展示会場の主催者
女性:ってことはこれ、展示品? え、でもこれ、どう見てもガラクタ
少年:そうだね。価値なんてないのかもしれない、普通の人には
女性:君には価値があるものなの?
少年:どうだろう。考えたことないな
女性:ふーん。あれ? ね、あのトロフィー欠けてるよ。それになにか汚れて
少年:欠けたり、汚れた常態じゃないと、無価値なんだって
女性:汚れたほうが価値あるって、そんな――え、あの汚れ、どす黒く変色してるけど、まさか
少年:うん? なんの汚れだろうね
女性:じゃあ焼けた服って――あの服を着てた人は、どこかにいる?
少年:魂は我らが主の元に、かな。善行を積んでいればだけど
女性:肉体は?
少年:埋められたんじゃない? 日本人って土に埋めるんでしょ、人を
女性:生きてる人を埋めたりしないよ
少年:変なお姉さん、生きてないから埋められたんだよ
女性:……殺したの?
少年:え? あ、もしかして勘違いしてる? 違うよ、僕らは人を殺したりしてないから
女性:でも、コレクションって全部、死んだ人の原因とか、遺品とかだよね
少年:(笑う)博士がそういうの好きで
女性:笑って言うことかな!?
少年:僕が頼まれてるのは、コレクションになりそうなものを持ち帰ってくること
女性:私はコレクションにならないよ? 生きてるし
少年:生きてる人をショーケースに入れたりしないって。もう、怖がりだね
女性:あ、あはは。そうだよね
少年:だからさ。――頂戴
女性:……なにを?
少年:持ってるよね、お姉さん。ショーケースに飾れるコレクション。そのポケットに
女性:!
少年:大丈夫だよ。警察に言ったりしないし、証拠も隠滅できるよ。なんなら着替えていく? 服も、血の匂いがついてたら博士喜ぶから
女性:……私の所為じゃない、から
少年:人を殺す人って、だいたいがそんなこと言うよね
女性:お局さまが、アイツが悪いの! アイツが私にばかり!
少年:血気立たないで。僕らはただ、ポケットの中身が欲しいだけだから。お姉さんがどんな理由で誰を殺めてきたかとかには興味ないんだ
女性:自分で処分するから
少年:もったいないよ。ね、ここに展示してよ。暇なときに見にこれるし
女性:見て楽しいものじゃない
少年:今はね
女性:……本当に、警察に行かない?
少年:行かないよ。行く理由がないから
女性:…………だったら

 扉が閉まる

○駅前 後日

 仕事帰り、元気な様子で女性が駅の改札を通ってくる

女性:あー、きっかり定時退社。素晴らしい。うーん、スポーツジムにでも行こうかな。あ

 少年を発見 

女性:やっぱり、綺麗
少年:あれ、また会ったね。お姉さん
女性:うん。久しぶり
少年:元気にしてた?
女性:元気だったよ。君は?
少年:僕? さぁ、どうだろう
女性:あの、さ
少年:新しい展示品増えたけど、見に来る?
女性:……増えたの?
少年:増えるよ。当たり前じゃない
女性:そっか、そうだね
少年:見にくる?
女性:暇だし、行こうかな。ビール出たりしない?
少年:しない。館内飲食厳禁だよ
女性:ちぇー

END


。。。異国である、意味とは!!
すみません、異国要素が発揮できずに!!
posted by 日下稔 at 16:19 | Comment(0) | 台本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2016年10月12日

いとし子【台本になり損ねたやつ】

書いていたものが出てきたー!!
続きは藪の中だね。つついても出てこないけど。
結構、雰囲気に頼ったやつだからなぁ、これ。

○夢の中

 誰かがひそひそと喋っている
 それは押し殺した笑みを不気味に隠しているようでもあった

A:誰が殺したの?
B:誰か殺されたの?
A:くすくす、あなたはもちろんご存知よ
B:くすくす、なになにだぁれ、教えてよ
A:教えてあげましょ、お知りなさいな。ほぉらあれ
B:まぁ、醜いお姿。さもありなん。ざまあみろ
A:腐敗したお顔、とても綺麗よ、ざまあみろ。ねえ
B:アナタもそう思うでしょ? <被る>
A:アナタもそう思うでしょ? <被る>

○電車の中

 まるで自分に対して問いかけられたかのように感じ、樹里は飛び起きる
 視界に映るのは電車の車内、窓の外には田園風景

樹里:……っは、……あ、なに、いまの……ゆめ?

 飛び起きた樹里に近づいてくる結奈

結奈:樹里、どうしたの?
樹里:ううん、なんでもない
結奈:夢見悪かった? 汗かいてるわよ。お茶飲む?
樹里:ありがと
桃子:樹里先輩! おきましたー?
樹里:桃子、うるさい
桃子:夜更かししちゃったんですか? それとも、旅行が楽しみだから興奮して寝れなかったとか?
結奈:桃ちゃん、ほかのお客さんもいるから静かにね
桃子:はーい。そろそろ蛍里(ほたるざと)駅に着くそうですよ
結奈:じゃあ荷物をおろしちゃおっか。桃ちゃん手伝って
桃子:うえー
樹里:『蛍里駅、初夏になるとゲンジホタルが見れる池があるという旅館に泊まりにきたのだけれど』
樹里:なにか、忘れているような
桃子:樹里先輩も手伝ってくださいよー。なんなんですか、この荷物、めっちゃ重い!
結奈:私の荷物だから、落としちゃやーよ
桃子:結奈先輩の鬼! 悪魔! でぶ!!
結奈:な、ん、ですってぇえ!!
桃子:きゃー!
樹里:なにを、忘れて――

 列車がトンネルに入った
 車内が暗くなり、どこからか声が聞こえる

A:あーあ、忘れたの?
B:まぁま、忘れたの?
A:ざまあみろ <被る>
B:ざまあみろ <被る>

 列車がトンネルから出る

樹里:!? な、に
結奈:? どうかした、樹里
樹里:いまなにか聞こえなかった?
結奈:ううん、聞こえなかったけど
樹里:……そう
アナウンス:次は、蛍里〜、蛍里〜
桃子:ささ、先輩たち。おりましょー!
結奈:はしゃがないの
樹里:気のせい?

○駅の改札口

 出てくる人を見ていた慎也は、樹里たちの姿を見つけると嬉しそうに手を振る

慎也:おーい、こっちこっちー!
桃子:慎也せんぱーい、お迎えですかー?
慎也:そうそう、美人が三人も田舎に来るって聞いたもんだから
桃子:あ、嬉しいこと言う!
結奈:お久しぶりです、慎也先輩。知佳先輩は
慎也:あいつは家で留守番。お前ら来るって聞いて、はしゃいで熱出した
結奈:あー
慎也:よ、樹里。久しぶりだな
樹里:慎也さん。お久しぶりです
慎也:どうした? 顔色悪いぞ?
樹里:ちょっと、電車に酔っただけです
慎也:あー、いまから車なんだが、休んでから行くか? 土産屋も近くにあるぞ
樹里:いえ、大丈夫ですよ
慎也:本当か? お前、無茶するからなぁ
結奈:まったくですよ。いつも自分勝手に――え? 樹里!?

 ぐらりと樹里の視界が揺らぐ
 視界は周囲から黒く塗りつぶされていき、それと同時に平衡感覚が保てなくなり、地面に倒れた

桃子:樹里先輩! どうしたんですか、樹里先輩!!
結奈:樹里、ちょっと樹里! どうしたの
慎也:揺するんじゃない!
桃子:でも樹里先輩、倒れて
慎也:頭打ってないな。家に急ごう。車に運ぶから

 遠くに友人の声を聞きながら、樹里の意識は途絶えた
 真っ暗な視界の中、どこかで聞いた事のある声がする

瑠里:やっと帰って来る気になったんだ。お帰り、曼珠(まんじゅ)
樹里:違ウ、ワタシ、ハ
瑠里:お誕生日おめでとう、曼珠。今日は素敵な日になるよ
樹里:違ウ、ワタシ
瑠里:そして今日がキミの命日さ。ははははは、あははははは!
樹里:ワタシハ、ワタシノ、名前ハ――ジュ
瑠里:ざまあみろ、ざまあない。さあ僕らも宴の席に着こうか、お手をどうぞ
A:キミよ償え、恩知らず
B:キミよ贖(あがな)え、恥知らず
瑠里:生まれ変わったら、また遊んであげるから。早くおいで、僕のいとし子。くふふ、あはははは

 遠ざかる声に伸ばそうとした手は、指先からぼろりと脆く崩れおちた
posted by 日下稔 at 15:40 | Comment(0) | 台本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする